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ヌカエビ
“ヌマエビ北部-中部群”という暫定名称(?)になったエビ


ヌカエビの情報には、種類の取り違いや、生態の誤解などが多いです。
一つの生き物としての『像』が成立していないと言ってよいのが現状です。


その原因として考えられるのは、以下のような感じと思われます。
1.淡水エビ研究の中心地は九州・沖縄な為、そこに生息しないヌカエビは蚊帳の外。
九州のエビ好きな管理人さんのサイトでは、エビの種類間違いは見たことがないほどで、
地域の人とエビの結びつきが濃いのだろうなという想像がつきます。
しかし、九州・沖縄にはヌカエビが生息しないので、
九州・沖縄発で出版される本があっても、ヌカエビが載りません。
同じく九州・沖縄発のサイトがあってもヌカエビの情報はありません。
その時点で情報量として大きく遅れを取ります。
2.ヌマエビの亜種とされていた事
ヌマエビ属のエビ。頭に棘が有るか無いかで、ヌマエビとヌカエビに分けていました。
その分け方だと、ヌマエビには大卵型と小卵型がある事になりました。
しかし、遺伝子を比べたところ、ヌマエビの大卵型はヌカエビでした。
ヌマエビ小卵型と、ヌカエビ+ヌマエビ大卵型は別種だったのです。
参照⇒【ヌマエビの混乱
ヌマエビの亜種とされていましたので、
生態や体形も大差ないだろうといった扱いを受けているように思えます。
現在は明確な別種ですが、過去に受けた“軽い扱い”が現在にも響いている印象です。

 

■ヌカエビの特徴■

◆『出眼』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヌカエビを初めて見た方の感想で見掛ける事が多いのが『出眼』。
目が真横に広がって生えているのです。
目玉をつなぐ柄の部分が長いようです。
おそらく、日本の主なヌマエビの種類の中では一番離れ目だと思います。
この眼だけを見て「スジエビだ!」とされてしまうことも多く、
「魚を襲う」といった冤罪を被っている例も多く見かけます。
逆に、「おとなしいスジエビ」として飼われている事も多いようです。
テナガエビ科のスジエビと違い、ヌカエビはヌマエビ科。
写真でも、手が短いのが解かると思います。

参考画像『スジエビ』

テナガエビ科のスジエビ。
関節が黄色い長い手脚と、黒いスジ模様のあるエビ。
胸の横に「ハ」を逆さにした模様を持ちます。
肉食性が強く、
脱皮したてのヌマエビ類は、彼等のよい餌となってしまいます。

 

◆『波裏富士』のような模様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヌカエビの胸の横には、北斎の浮世絵『波裏富士』を連想できそうな模様があります。
周囲が白く抜けた胸の横に、黒く独特な形の模様が浮かびます。

大波と富士山に見たててみるのも面白いです。
この模様の有無で、他種との見分けが随分と楽になります。
ヌカエビの多くは目立たない薄い飴色で、ぬかをまぶしたような細かい模様です。
その細かい模様が、この部分に集まり、独特の模様を形成します。
ただ、エビ全般に云える事ですが、
子エビ、若エビ、そして雄では模様が薄い、あるいは少ない傾向になります。
逆に大型の雌は模様が濃くなります。
色彩が深緑色やこげ茶色、濃紺や黒にまでなる個体もあるようです。
小型の個体や雄は透明感がやや高いです。

緑色の濃い大型♀。
独特の模様を持つので、見分けは容易。

 

◆『性格は温和そのもの』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヌカエビの性格は温和そのものです。
喧嘩や攻撃性とほぼ無縁です。
ヌマエビ科ですから、レッドビーシュリンプとも一緒に飼えます。
ビーシュリンプは喧嘩好きなヌマエビ類ですから、
体が大きくても、ヌカエビは簡単に負けてしまいます。
負けてしまうと云うよりも喧嘩をする気がありません。
簡単に場所を譲ります。

スジエビの見分け方(?)として、よく、
『透明で、腰が曲がっていて、眼が出っ張っているならスジエビ』という文章を見かけます。
こんな見分け方では、ミゾレヌマエビやヌマエビ(南部群)、
そしてヌカエビはスジエビになってしまいます。
特にヌカエビは他種に比べ、眼が出っ張っているという特徴まで一致してしまいます。
テナガエビ科とヌマエビ科は、『手の長さ』を最初に見なければ意味がありません。
しかもスジエビというくらいですから、スジエビのスジは濃くて太くて長いです。
テナガエビ科は、絶えず仲間の攻撃を警戒して、近寄る仲間とは仲が悪いです。
ハサミが届かない一定の距離を常に保ちます。
一方、ヌマエビ類は、餌にワーッと集まり、互いの体が触れたり重なったりする事に、
大きなストレスはないようです。
他の個体と仲良く寄り添ってツマツマと食べ続けます。


こちらはスジエビ。
早食いで、餌を抱え込んで、どんどんと胃に送り込みます。
このような目立つ色の餌を与えると、
頭の後ろの胃がうねうねと動いて面白いです。
ヌカエビの胃は動きません。

 

◆『淡水で繁殖します』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)は、どの地域の個体群も淡水繁殖のエビです。
「大卵型」ではないですが、この写真のような大きめの卵を産み、
孵化したゾエア(写真で、親の尻尾の先で下向きの子エビ)は、
しばらく浮遊生活をした後、親と同じ着底生活になります。
『中卵型』と呼ぶのが相応しい生活で、繁殖に海水は要りません。
巷の雑誌やサイト等では、「ソエア=海水必要」という発想からか、
よく「小卵型である」と断言されているのを見掛けます。
淡水エビの繁殖形態は小卵型と大卵型の二つしかないかのような情報が圧倒的ですが、
このヌカエビや純淡水型スジエビなどは、どちらにも含まれない『中卵型』です。
生息各地で、亜種になり得るほどの違いもある事が確かめられています。
陸封種特有の現象で、小卵型のように海でゾエアが均一化されない証明です。
浮遊生活をする期間は地域や水系で違う印象です。
かなり小さなゾエアが長期間舞う個体群もあれば、
卵が孵って、いきなり着底してしまう個体群もあるようです。
極めて近い地域でも、水系が違うと、ゾエア期間に大きな差があります。
川の上流か下流かでも差があるかもしれません。
それほどに各地で分化が進んでいる最中の生き物です。
参照⇒【ヌカエビの繁殖
参照⇒【渓流域産のゾエア
参照⇒【渓流域産のゾエア後期
参照⇒【感潮域産のゾエア
参照⇒【レッドビー水槽で繁殖

 

◆『外肢』が生えています。⇒詳しくは【ヌカエビの外肢】と【ヌカエビの外肢2

上の写真で、左の歩脚3本の付け根付近に、透明な小さな細い脚があります。
これが外肢と呼ばれるもので、ヌマエビ属(ヌマエビ・ヌカエビ)にある特徴です。
ヒメヌマエビ属のヤマトヌマエビやミゾレヌマエビにはありません。
カワリヌマエビ属のミナミヌマエビやシナヌマエビにも生えていません。
テナガエビ科のスジエビにも生えていません。
外肢は安いルーペ(実質3倍以上は欲しい)でも見易いです。肉眼でも見えるかもしれません。

外肢は必ず確認!
ヌカエビは他種との混同や種類の取り違いが非常に多いエビです。
1.シナヌマエビ類(外来のミナミヌマエビの近縁種)との混同。
近年、急速に各地で殖えているシナヌマエビ類。
“ミナミヌマエビ”として販売されているものが野外に放されたもののようです。
関東地方には元々ミナミヌマエビが生息しなかったため、
「関東で採れたからヌカエビ」という安易な判断で紹介されている例が多いです。
2.スジエビとの混同。
前述したように、テナガエビ科のスジエビとの混同は非常に多いです。
参照⇒【スジエビの見分け方

これらの種類間違いを簡単に防いでくれるのが『外肢の確認』です。
虫眼鏡で、脚の付け根を見るだけ。
大きな個体なら肉眼でも見えるかもしれません。
デジカメでマクロ撮影したら、嫌でも写ると思います。
ここをちょちょいと見るだけで、世のエビの混同は九割り解消できるのではないかと思います。
「エビを捕ったら、まず外肢」くらいなつもりで見ると良いと思います。
参照⇒【額角より外肢!外肢を見る効用
どのエビに対しても必ず見ると良いです。まず間違えずに済みます。

 

◆眼上棘が生えています。⇒詳しくはこちらこちら

眼の真上。額角の付け根の部分との隙間に前を向いた棘が生えています。
これが眼上棘と呼ばれるものです。
ヌマエビ属(ヌマエビ・ヌカエビ)にだけある特徴です。
角度によっては、かなり見にくいです。肉眼ではまず無理でしょう。
外肢の有無と眼上棘の有無は重なりますから、
見易い外肢を見れば、特に出番はありませんが、
顔のアップなどでは威力を発揮します。

 

ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)の見分け方

以下のような順番で見て行くと見分け易いと思います。
1.全体のシルエット⇒【ヌカエビとミナミヌマエビの見分け方】体のうねうね具合が随分と強いです。
2.目の出っ張り具合や角度⇒【こちら】や【こちら
3.独特の斑紋の配列⇒【ヌカエビの模様の特徴
4.外肢⇒【こちら】と【こちら
5.つるつるハゲ頭⇒【こちら】や【こちら】※ヌカエビの地域変異「旧ヌマエビ大卵型」には棘があります。
6.眼上棘⇒【こちら】と【こちら
外肢まではぎりぎり肉眼でも見えるかもしれません。
倍率の高い100均のルーペはあって損ないです⇒【100円でエビの世界に入れます
デジカメでマクロ撮影してもOKです。

※「体が透明」、「目が出ている」、「腰が曲がっている」などはエビの共通点なので、
見分け方法としては使えません。
(翼があって、茶色くて、ピーピー鳴くから「スズメ」と云っているようなもの)
エビに見慣れて、小さな違いが解かるなら足しにはなるかも?くらいです。
そこだけで、見分けが完了する事はまずありません。
ほかにも、他種との共通性が高い為、エビの見分けに使えない部分は、
・背中を真っ直ぐに通る明るい縦線(背骨のような模様も)
・腹節の出っ張った部分(腰)の部分に入る鞍状の輪っか、です。
このあたりは、どのエビにも有ることが多いです。
(もちろん、濃さや配置の特徴まで見れば、参考の一つにはなります
共通性を越えるまで比較し尽くせば、特徴として使えると思います)

 

 

古〜い情報や誤情報に要注意

ヌカエビは、淡水エビ学の中心地である沖縄や九州からは程遠い地域に生息する為か、
非常に研究が遅れている印象のあるエビです。
この種に対するイイカゲン情報は物凄く多いので、
覚悟した上で独自にしっかり勉強したほうが良いと思います。
(当然、ここの情報も“他人”の情報ですので、自己判断してください)
個人的に現在分かっている、古い情報や巷の誤情報との対比は以下の通り。

×小卵型で、繁殖には汽水が必要
「中卵型」という表現が認識し易いと思います。
やや小さめの卵を産み、浮遊幼生(総じてゾエアと呼ばれます)として孵化しますが、
淡水中でそのまま稚エビとなります。海水は要りません。
完全な陸封種で、各地に亜種レベルくらいまでの地域個体群がいくつも存在します。
よく、「淡水で繁殖できるエビはミナミヌマエビだけ」という記述を見ますが、
ミナミヌマエビを凌ぐ淡水繁殖の一大勢力です。

産まれてすぐは、頭を下にして浮遊している事から、
「浮遊幼生=小卵型=海水が必要」という誤解を受け易いエビです。
水質を良好に保ち、やや珪藻(茶ゴケ)が生え易い環境にすると、
淡水中で勝手に稚エビになっています。
地域や水系の違いで、いきなり着底する個体群や、
本当に小さなゾエアだったりと、様々な成長段階で孵化するようです。

 

×ヌマエビとヌカエビは亜種関係
よく見る定番の表現ですが、
ヌカエビとヌマエビは別種であることが分かっています。
額角上の棘が眼の後方にまであるのがヌマエビ。
額角上の棘が眼の前方までなのがヌカエビ。
とされてきましたが、
これだと、眼の後方まで棘がある陸封個体群が存在してしまい、
それがヌマエビ大卵型と呼ばれていました。
しかし、これは遺伝子的にヌカエビの一種である事が分かり、
ヌカエビと共に「ヌマエビ北部−中部群」という暫定名称にされています。
それに対して小卵型で繁殖に汽水が必要なタイプが、
ヌマエビ南部群と呼ばれています。
つまり、

ヌマエビ●ヌマエビ小卵型●ヌマエビ大卵型
ヌカエビ⇒
●ヌカエビ
と分けられていたものが、
●ヌマエビ小卵型ヌマエビ南部群
●ヌカエビ●ヌマエビ大卵型ヌマエビ北部−中部群
の二つになりました。
この両種は別種であることが交配実験で確認されています。
そもそも「棘の違いは絶対に種類の違いだ!」という根拠はないはずです。
その事が証明された一例でもあります。⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情

 

×ヌマエビとヌカエビの見分け方は額角上の棘が眼の後方まであるかないか
ヌカエビとヌマエビの見分け方とされて来た
額角の上の棘が、眼の上の後方まで有るか無いかは、
上記のような理由で、参考程度のものになっています。
同一地域内の個体差でも棘が有るか無いかがあるらしいです。
種を区別するものとしては、とても使えません。
もちろん旧来のヌカエビを判断するのには、
「つるつるハゲ頭」は重宝します。

額角上のギザギザが目の前までしかないヌカエビ。
旧ヌマエビ大卵型はヌカエビと同種であることが判明しましたが、
以前ヌマエビとされただけあって、眼の後ろにも棘があるそうです。
つまり、ヌカエビには、目の前までしか棘がないものと、
眼の後ろにまで棘があるものが存在します。
頭がつるつるハゲ頭とは限らないという事です。

 

×ヌマエビとヌカエビは酷似していて見分けは困難
ヌマエビ大卵型とヌカエビの見分けが困難なのは当然です。
同種なのですから、酷似しているのは当たり前です。
非常に恥ずかしい印象を持つ表記ですが、普通によく見掛けます。
ヌマエビ(ヌマエビ南部群)とヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)の両種の見分けは簡単です。
ヌマエビは観賞魚店や通販で“ミゾレヌマエビ”と呼ばれて売られています。
あの黄色い点がたくさんあるやや綺麗なエビがヌマエビ(ヌマエビ南部群)です。
ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)は地味で、眼が横に出っ張っています。
・ヌマエビ(南部群)は、100%近く“ミゾレヌマエビ”として誤認され続けている。
・アクアリストが、その“誤認のミゾレヌマエビ”とヌカエビを混同している事はない。
ということからも、両種は酷似していないですし、見分けは簡単である事が分かります。
参照⇒【ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)の模様の特徴
参照⇒【ヌマエビ(ヌマエビ南部群)の模様の特徴
ヌカエビとヌマエビは模様が全く違いますし、
眼の出っ張り具合も違います。
アルコール漬けの標本の場合には、色素が抜けてしまい、
互いの差が極めて微量になってしまうという事で、
ヌマエビとヌカエビの見分けは困難という“常識”が成り立っているのだろうと思いますが、
これは模様や色彩を見ない研究者が書く本の上でのお話と思います。
色のある生きている状態では、まず見た目のみで区別できると思います。

 

×亜種のヌマエビには小卵型と大卵型の個体群がある
ヌマエビには小卵型と大卵型があるとされていましたが、
ヌマエビ大卵型はヌカエビの一地域個体群であることが確認されています。
棘が眼の後方まで生えていたヌカエビです。
ヌマエビ小卵型は旧来通りヌマエビ=ヌマエビ南部群=商品名ミゾレヌマエビです。
このヌマエビ南部群は琉球列島産と本州産では若干DNAに距離があるそうですが、
小卵型は、各河川で放出されたゾエアが海に下って混ざり、
再び遡上するという生活史なので、地域差がほとんど存在しないようです。
つまり、ヌマエビは小卵型のみです。
ヌカエビは中卵型という表記がしっくりくる浮遊ゾエアで孵化しますが、
海へは下らず、そのまま淡水で稚エビになるタイプです。
ヌマエビ大卵型はこちらに移動されましたので、
ヌカエビと同じ生活史と考えて良いものと思います。
※大卵型という定義はけっこうあやふやなのかもしれません。
「小卵でなければ大卵」といった使われ方にも思えます。
よく、本や雑誌などに、
淡水エビには小卵型と大卵型の2種類の産卵形態があると書かれますが、
3種類と判断したほうがより分かり易いと思います。
2種類にしか分けていない説明ばかりなので、
スジエビやヌカエビ、淡水型のテナガエビなどへの理解が進まないわけです。
・小卵型⇒小さな卵をたくさん産み、ゾエアは海へ下って成長、稚エビが川を遡上する。
・中卵型⇒やや大きな卵を産み、浮遊ゾエアで孵化、そのまま淡水中で稚エビとなる。海水不要。
・大卵型⇒大きな卵を少数産み、稚エビが孵化する。海水不要。
ヌカエビは“中卵型”という表記が一番ピッタリです)

 

×関東や東北に生息
山陰地方や琵琶湖などにも生息する、
いわゆる「ヌマエビ大卵型」もヌカエビの地域型であることが
遺伝子レベルで判明したようです。
関東や東北限定のエビではないです。
関東や東北、東海、山陰、琵琶湖周辺などに広く分布する事になります。
生息種として「ヌマエビ」としか書かれていない情報には、
多くの旧ヌマエビ大卵型が含まれているはずです。
旧ヌマエビ大卵型=頭に棘のあるヌカエビ。
⇒【本州中部って?
⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情

 

×肉食で魚を襲って食べる
しばしば見掛ける誤まった情報です。
眼が同じように出っ張っていて腰の曲がっているスジエビとの混同が原因のようです。
参照⇒【スジエビとヌカエビの見分け方

川や池で淡水エビ(モエビ・川エビ)を採集したら、
まずこの3つには分けてみて下さい。
参照⇒【淡水エビの見分けの第一段階
とりあえず、これをしておけば、あとはゆっくりでOKです。
この3つに分けないと話は進みません。

 

×ヌマエビは田んぼで養殖できる
以上のような経緯を全部知った上でなら解かると思いますが、
田んぼで養殖できるのはヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)です。
旧来からのただのヌマエビは淡水では繁殖できません。
同種をいつまでも「ヌマエビ」という一言を冠して呼んでいると、
こういう新たな混乱が生まれて来ます。
(出荷する商品名が“ヌマエビ”になるらしい)
せっかく事実が解かって来たのに、
その事実が、新しい混乱や間違いを生む事になっていくのでしょうか。
●ヌマエビ南部群
●ヌマエビ北部-中部群
こういう分け方を見て、ふつうこれを別種とは思いません。
南の方に住んでいるヌマエビ、北の方に住んでいるヌマエビ、
ただそう思うだけだと思います。
現在までに広く知られた“ヌカエビ”という種名を無くし、
“ヌマエビ”という別種2種が含まれた名前を冠するのは新たな混乱の元です。
分かったのは単純に「ヌマエビ大卵型はヌカエビだった」という事実だけです。
所属が移動しただけですから、
一般に広く良く知られた“ヌカエビ”という呼び方を個人的には続けます。
そうすれば、一方のヌマエビ南部群も“ヌマエビ”でOKなままで済みます。
この2種は別種ですから、
別種であることがハッキリと分かる別の名で呼ぶのが相応しいと思います。
(つまり、今まで通り「ヌマエビ」「ヌカエビ」で良いという事)

この大変に説明不足な状況は、ヌマエビ属以外のヒメヌマエビ属や、
カワリヌマエビ属も含めた全部のヌマエビ類が北部や南部といった生息地で分かれているだけという、
とんでもない誤解を、一般の方に対して生み出しています。
つまり、すべてのヌマエビ科の分類を白紙にしてしまったかのような誤解です。
「ヌマエビ」というヌマエビ類の総称としての意味も持つ名前が、
一種を指す種名としても使われ続けている事が、
誤解の原因として大きく加わっています。
一般への説明責任と、誤解を防ぐ努力が欠け過ぎているのを感じます。

個人的には、もっと違いを際立たせて、
ヌマエビ南部群は「ホンヌマエビ」くらいに呼んでしまって良さそうに思えます。
ヌマエビ全体の総称としての“ヌマエビ”からも切り離されて、名前の混用が防げます。
琉球列島付近の個体群は、若干、遺伝子が違うという事ですが、
亜種の「リュウキュウホンヌマエビ」と呼ぶほどではないのかもしれません。
「ヌカエビ」はそのままで良さそうです。
両種に関しては、以下のような感じにしたほうが混同がなく憶えやすいです。
(正式にも、もう少し解かり易くしても良さそうなものですが)

【ホンヌマエビ】ヌマエビ科ヌマエビ属
ヌマエビ=ヌマエビ小卵型=ヌマエビ南部群=観賞魚店での販売名“ミゾレヌマエビ”。
黒潮の当たる日本沿岸の河川に分布。
小卵型で淡水水槽内での繁殖は不可能です。(海水が必要)
ヌカエビとは亜種ではないことが確認されています。
模様や色彩も違い、行動パターンにも違いが大きいです。
一般には“ミゾレヌマエビ”の名前で知られていますが、
本当のミゾレヌマエビはヒメヌマエビ属なので、外肢や眼上棘が無いことで判別は容易です。
売られている“ミゾレヌマエビ”は外肢があり、眼上棘もあるヌマエビ属ホンヌマエビです。
両種は模様が全く違うので、見分けも容易です。
水槽内では3年前後生きることがあります。

ミゾレヌマエビでおなじみのホンヌマエビ。
明るい印象で、やや色彩も豊富。
ヌカエビよりも透明度が高い。

【ヌカエビ】ヌマエビ科ヌマエビ属
ヌカエビ=ヌマエビ北部-中部群=ヌマエビ大卵型
山陰、関東、東北、東海、琵琶湖周辺などに広く分布。
中卵型で、浮遊ゾエアで孵化し、そのまま淡水中で稚エビとなります。
淡水の水槽内でも繁殖は比較的容易です。(海水不要)
海との繋がりが要らず、池や沼、山間の小川などにも生息します。
陸封種なので生息各地で亜種相当の個体群があります。
隣り合う水系でも、孵化するゾエアの発達程度が違うほどです。
棘の有無でホンヌマエビの大卵型地域変異と思われていたヌマエビ大卵型は、
遺伝子の比較でヌカエビの地域個体群の一つであった事が判明しています。
これにより、ヌカエビはホンヌマエビとは亜種ではなく、晴れて別種となりました。
模様にも大きな違いがあり、
ホンヌマエビは“ミゾレヌマエビ”として観賞用に販売されるほど綺麗ですが、
ヌカエビは何の変哲も無い地味なエビです。
眼の離れ具合も広く、見分けは容易です。
性格もヌカエビのほうが、かなりのんびり・おっとりしています。
水槽内では3年以上生きることがあります。

和名を「デメヌマエビ」にしてしまうというのも混乱を避けるにはよいかもしれません(笑)。
参照⇒【ヌマエビの混乱

 

 

ヌカエビと間違われやすい生き物

●『スジエビ』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
透明、腰が出っ張っている、眼が飛び出しているという共通部分で、
ヌカエビやミゾレヌマエビと混同される事が多いです。
テナガエビ科なので、手の長さを見るだけでも見分けは容易です。

1.体のあちこちを通る黒いスジ模様が目立つ。
2.そのスジ模様で、胸の横に「ハ」を逆さにしたような模様。
3.腰の一番出っ張った部分に、下まで通る目立つスジ。
4.テナガエビ科らしく、ハサミ脚が長い。
5.ハサミ脚や歩脚の間接が黄色い。
6.額角のギザギザが大きく、粗い。
7.外肢が生えていない。
8.頭を斜め上に向けていて、姿勢が良い。
9.餌を食べると、胃がうねうねと動く。
10.鼻先にある、上を向いた触角が白い場合が多い。
などなど、見分ける箇所は豊富です。⇒【スジエビの見分け方

 

●『シナヌマエビ類(“ミナミヌマエビ”として販売される)』・・・・・
焼津以東には本来ミナミヌマエビが生息しないため、
「関東で採れたのでヌカエビ」として紹介される事が多いです。
眼の角度や、外肢の有無の確認をするだけで、混同は簡単に防げます。

1.眼が、斜め前を向いて生えている。(あまり離れていない)
2.外肢が生えていない。(眼上棘もない)
3.額角に、頭の上にまで、ギザギザがある。
4.前側角部に棘がある個体が多い(日本在来種には必ず生えている)。
5.体形に起伏が少ない。
6.大卵型で大きな卵。
7.腰の一番出っ張った部分に、真上から見て「ハ」の字の斑点が入る場合が多い。
8.胸の横の模様配列が違う。(↓ヌカエビ

最低でも、眼の出っ張り具合と、生えている方向を真上から確認。
そして、外肢の有無を必ず確認しておくと良いと思います。
⇒【シナヌマエビ(販売名ミナミヌマエビ)とヌカエビの見分け方

 

 

誤情報で汚れた頭の中を、いかに正しい知識で綺麗にして行くか。
これはヌカエビに限らず、淡水エビ全体に云える事だと思います。
この浄化して行く作業のほうに膨大な時間が掛かりました。
よく「淡水エビは難しい」と云われますが、
難しいの意味が違います。
簡単なのですが、難しくされているだけ。
誤情報が無ければ簡単です。

誤情報の泥沼の中から自力で這い出せれば、
「な〜んだ!たったそれだけのこと?」の世界が待っています(^^;。

 


2008・04・20 更新
2008・09・22 更新
2008・10・25 抱卵写真追加&書き足し
2009・02・27 更新


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