
ヌカエビのメスの若い個体です。
卵巣も小さく、まだ背中の曲がりも少なめです。
山間の清流の滝のすぐ上で採集したものの子孫です。
採集地では浅瀬の砂地に落ち葉が少々見られる環境でした。
ベアタンクに市販の腐葉土を水に晒した物を敷いてみましたが、飼育に特に必要ではありません。
ウソ情報に要注意
ヌカエビは、淡水エビ学の中心地である沖縄や九州からは程遠い地域に生息する為か、
非常に研究が遅れている印象のあるエビです。
この種に対するイイカゲン情報は物凄く多いので、
覚悟した上で独自にしっかり勉強したほうが良いです。
(当然、ここの情報も“他人”の情報ですので、自己判断してください)
個人的に現在分かっているウソ情報との対比は以下の通り。
×小卵型で、繁殖には汽水が必要
「中卵型」という表現が認識し易いと思います。
やや小さめの卵を産み、浮遊幼生(総じてゾエアと呼ばれます)として孵化しますが、
淡水中でそのまま稚エビとなります。海水は要りません。
完全な陸封種で、各地に亜種レベルくらいまでの地域個体群がいくつも存在します。
よく、「淡水で繁殖できるエビはミナミヌマエビだけ」という記述を見ますが、
ミナミヌマエビを凌ぐ淡水繁殖の一大勢力です。
×ヌマエビとは亜種関係
よく見る定番の表現ですが、
ヌカエビとヌマエビは別種であることが分かっています。
額角上の棘が眼の後方にまであるのがヌマエビ。
額角上の棘が眼の前方までなのがヌカエビ。
とされてきましたが、
これだと、眼の後方まで棘がある陸封個体群が存在してしまい、
それがヌマエビ大卵型と呼ばれていました。
しかし、これは遺伝子的にヌカエビの一種である事が分かり、
ヌカエビと共に「ヌマエビ北部−中部群」という暫定名称にされています。
それに対して小卵型で繁殖に汽水が必要なタイプが、
ヌマエビ南部群と呼ばれています。
つまり、
●ヌカエビ
●ヌマエビ小卵型
●ヌマエビ大卵型
と分けられていたものが、
●ヌカエビ、●ヌマエビ大卵型⇒ヌマエビ北部−中部群
●ヌマエビ小卵型⇒ヌマエビ南部群
の二つになりました。
この両種は別種であることが交配実験で確認されています。
そもそも「棘の違いは絶対に種類の違いだ!」という根拠はないはずです。
その事が証明された一例でもあります。⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情】
×ヌマエビとヌカエビの見分けは額角の上の・・・・・
ヌカエビとヌマエビの見分け方とされて来た
額角の上の棘が、眼の上の後方まで有るか無いかは、
上記のような理由で、参考程度のものになっています。
同一地域内の個体差でも棘が有るか無いかがあるらしいです。
種を区別するものとしては、とても使えません。
もちろん旧来のヌカエビを判断するのには、
「つるつるハゲ頭」は重宝します。
×ヌマエビとヌカエビは極似していて見分けは困難
ヌマエビ大卵型とヌカエビの見分けが困難なのは当然ですよね。
同種なのですから、
極似しているのは当たり前です。
非常に恥ずかしい印象を持つ表記ですが、普通によく見掛けます。
ヌマエビ(ヌマエビ南部群)とヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)の両種の見分けは簡単です。
ヌマエビは観賞魚店や通販で“ミゾレヌマエビ”と呼ばれて売られています。
あの黄色い点がたくさんあるやや綺麗なエビがヌマエビ(ヌマエビ南部群)です。
ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)は地味で、眼が横に出っ張っています。
参照⇒【ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)の模様の特徴】
参照⇒【ヌマエビ(ヌマエビ南部群)の模様の特徴】
×関東や東北に生息
山陰地方や琵琶湖などにも生息する、
いわゆる「ヌマエビ大卵型」もヌカエビの地域型であることが
遺伝子レベルで判明したようです。
関東や東北限定のエビではないです。
本州中部以北に広く分布する事になります。
⇒【本州中部って?】
⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情】
×肉食で魚を襲って食べる
しばしば見掛ける誤まった情報です。
眼が同じように出っ張っていて腰の曲がっているスジエビとの混同が原因のようです。
参照⇒【スジエビとヌカエビの見分け方】
川や池で淡水エビ(モエビ・川エビ)を採集したら、
まずこの3つには分けてみて下さい。
参照⇒【淡水エビの見分けの第一段階】
とりあえず、これをしておけば、あとはゆっくりでOKです。
この3つに分けないと話は進みません。
×ヌマエビは田んぼで養殖できる
以上のような経緯を全部知った上でなら解かると思いますが、
田んぼで養殖できるのはヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)です。
同種をいつまでも「ヌマエビ」という一言を冠して呼んでいると、
こういう新たな混乱が生まれて来ます。
せっかく事実が解かって来たのに、
その事実が、新しい混乱や間違いを生む事になっていくのでしょうか。

オスの成体です。背中の曲がりがやや強く、コブのように盛り上がります。
死んだ個体が出ても採集した数をキープしているので、不思議に思っていたところ、仔エビを発見。
最初はミナミヌマエビが紛れたかと思いましたが、
この背中の湾曲の強さでヌカエビとわかり、繁殖が確認できました。

オスの成体。
亜種とされていたヌマエビ南部群(商品名ミゾレヌマエビ)は、
額角の眼窟の後方以降(頭の上)にも棘があり、繁殖形態は小卵型です。
性質も違います。
ヌカエビはやや色味に欠けるエビですが、ふわふわした浮遊感が楽しめる種類です。
淡水で繁殖できるのが、なんといっても楽しい部分です。
2008・04・20 更新